ASEAN主要国で注目されるグリーンフィンテック
-ESGデータ収集・分析・報告とカーボンサービスを中心に-

北野 陽平

要約

  1. ASEAN主要国では、高い経済成長を背景に温室効果ガス排出量が増加傾向にある。2050年までまたはそれ以降に温室効果ガス排出量実質ゼロ(ネットゼロ)の達成が目指されており、排出削減に向けた様々な取り組みが進められる中、グリーンとフィンテックを組み合わせた「グリーンフィンテック」が注目されている。
  2. 近年、気候関連を含む環境・社会・ガバナンス(ESG)情報開示を巡る動きが活発化している。ESGデータ収集・分析・報告の取り組みに最も積極的なシンガポールでは、政府・金融当局が企業のESG情報開示を支援するプラットフォームを構築するとともに、ESGフィンテック向けに補助金を提供しており、エコシステムの拡大につなげている。
  3. ASEAN主要国では、カーボンプライシングの一種であるカーボンクレジット取引への注目が徐々に高まっている。近年、証券取引所等によりカーボンクレジット市場が創設されてきた中、テクノロジーを活用したカーボンクレジットの取引・助言・追跡等のサービスを提供するスタートアップが増加傾向にある。
  4. 政府系投資機関やベンチャーキャピタル(VC)ファーム等の投資家は、ASEAN主要国のグリーンテック分野への関心を高めている。そうした動きが広がっていけば、既存のグリーンテック企業が成長資金の調達をより行いやすくなるとともに、新たに同分野に参入するスタートアップの増加につながる可能性もある。
  5. 今後の注目点として、ASEANと日本との協力強化が挙げられる。日本は、温室効果ガス排出量の算定・報告に関する制度が整備されていないASEANを支援すべく、共通ルール作りを主導する方針である。両国・地域間の協力強化により、グリーン及びサステナブルファイナンスの拡大を通じてグリーン投資がさらに促進され、ひいてはアジア全体の温室効果ガス排出削減につながることが期待される。
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