社会課題でも「形式」から「実質」への深化に期待
-ソーシャル・ベンチマーク2024から見た状況-
西山 賢吾
要約
- 「世界で最も影響力のある2,000社(SDGs2000)」を選出し、それら企業のSDGs(持続可能な開発目標)の貢献度を評価・測定するWBA(World Benchmarking Alliance)は2024年7月にソーシャル・ベンチマークを初めて公表した。これはSDGs達成への企業の行動変容を促すためにWBAが設定した7つのシステム・トランスフォーメーション(構造的変革)のベースとなるソーシャル・トランスフォーメーションの達成度をみるベンチマークであるが、スコアは22.7%と低水準に留まった。
- この結果に対しWBAは「企業行動の大幅な改善なくして、SDGsの達成は困難なままであろう」と憂慮しており、事態の改善に向け、政府や市民社会、投資家を含む金融機関等が企業に積極的な働きかけをすることを強く望んでいる。
- 日本企業(対象企業数151社)のスコアは24.2%であり、SDGs2000平均を上回ったが、G7除く日本(対象企業数761社)平均の27.2%を下回った。内訳をみると、人権尊重は30.2%とSDGs2000、G7除く日本を上回ったが、ディーセント・ワークの提供・推進や、倫理的行動ではSDGs2000、G7除く日本を下回っており、課題が残る。
- また、人権デュー・デリジェンスを含む人権尊重関連は相対的に高い水準であるが、「影響を受けた、及び影響を受ける可能性のあるステークホルダーとのエンゲージメント」や「外部の個人やコミュニティに対する苦情処理の仕組み」のスコアは相対的に低く、社会課題への対応もコーポレートガバナンスと同様、「形式」から「実質」への深化が今後望まれる。また、同ベンチマークは開示資料を基に評価されることから、社会的課題に対する情報開示の充実も課題となろう。