健康経営の潮流と展開
-健康経営の現状及びファイナンスの事例-
富永 健司
要約
- 従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法である健康経営の取り組みが新たな展開を見せている。具体的には、2023年1月に有価証券報告書等を通じた人的資本に関する開示が義務化される中で、人的資本に関する戦略の一つとして、健康経営を位置づける動きが進んでいる。
- 国内企業は、上場・非上場企業、業種によって取り組みの水準に違いがあるものの、健康経営を着実に推進している。さらに、京都銀行及び千葉銀行をはじめとした地域金融機関を中心に、健康経営に関連する指標をローンの提供における重要業績評価指標(KPI)として組み込んだサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)やポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)を実施する動きも広がっている。
- こうした状況の中で、健康経営の効果を高めるためには、健康経営を通じて従業員のパフォーマンスを向上させ、人的資本戦略の実現につながる好循環を作り出すことが重要である。このプロセスでは、組織によって異なる課題や改善点を考慮し、それぞれの特性やニーズに応じたアプローチをとることが求められる。
- 今後、企業が健康経営に一層積極的に取り組むことで、業務パフォーマンスが改善し、企業価値にポジティブな効果が現れるのか、そして金融資本市場が健康経営を後押しする動きがさらに広がるのか注目される。