ブロックチェーンで拡がるESGをテーマとした資金調達の未来
-オーストリアのフェアブントによるグリーン・シュルトシャイン-

野村資本市場研究所 江夏 あかね、佐藤 広大

要約

  1. オーストリアの大手電力会社フェアブント(Verbund AG)は2018年4月17日、世界初の取組みとなるブロックチェーン技術を活用した「グリーン・シュルトシャイン」(Grüner Schuldschein)による資金調達を実現させた。
  2. グリーン・シュルトシャインとは、債務証書とも呼ばれるドイツ法に準拠したローンで、調達資金の使途を環境に配慮したプロジェクトとする、環境・社会・ガバナンス(ESG)関連の金融商品である。今般の資金調達に当たっては、ブロックチェーン技術が活用され、発行体から投資家へのプロセスをデジタル化することで、コミュニケーション、透明性、自動化といった観点から、調達プロセスが改善された。
  3. 発行体・投資家等は、プロセスの改善により調達関連コストの縮減や利便性向上といったメリットを享受することとなった。今後、ESGをテーマとした負債性資金調達でも、デジタル・プラットフォームの一環としてブロックチェーン技術の活用が選択肢の1つとなる機会が増える可能性もあろう。
  4. 今般のグリーン・シュルトシャインによる資金調達は、将来的なESG関連データ蓄積・充実化といった観点からも、多くのESG市場参加者に対して考えるきっかけを与える事例になったと言える。
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