2018年議決権行使の注目点

野村資本市場研究所 西山 賢吾

要約

  1. 2018年の株主総会集中日は6月28日であるが、その集中率(6月28日開催企業数の6月開催企業全体に占める割合)は3年ぶりに上昇すると見られる。しかし、株主への招集通知の早期送付や、ウェブを用いて株主への送付より早く上程議案を開示する企業は増えており、株主が議案を精査する時間を確保するための企業の取り組みが進んでいると言えるであろう。
  2. 近く改訂が予定されているコーポレートガバナンス・コードや議決権行使助言会社の助言方針などから考えると、機関投資家の議決権行使ガイドライン変更の主な検討ポイントは、社外取締役の増員、剰余金処分議案におけるキャッシュリッチ基準(金融資産保有額に比して配当額の少ない企業の議案に反対する基準)の導入、ストックオプションや株式報酬型制度において社外取締役を付与対象とすることの容認、等が挙げられるであろう。ただし、全体的にみると変更は小幅に留まると見られるため、主要議案の賛成率は2017年6月や2018年3月に株主総会を開催した企業と大きな変化はないと考えられる。
  3. 3. 投資ファンドからの株主提案が注目されているが、2018年3月開催の株主総会における株主提案の賛成率をみると、可決に至るまでにはまだ距離があるように見える。しかし、議案によっては機関投資家からの賛成も出ているため、6月開催の株主総会における株主提案において、真に企業価値の向上に結びつくとして多くの投資家の賛同を集める内容の提案が見られるかどうかが注目される。
  4. スチュワードシップ・コードが2017年に改訂され、多くの機関投資家が議決権行使の結果を個別議案ベースで開示するようになったが、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードが期待する企業と機関投資家との建設的な対話において、議決権行使結果がテーマになる機会が増えているとはまだ言い難い。2018年6月開催の株主総会における議決権行使結果が重要な対話テーマとなり、対話を通じて企業と機関投資家の相互理解が深まることにより、我が国企業のコーポレートガバナンスがさらに進化すると期待される。
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