世界的なエネルギー政策の転換と気候関連財務情報開示

野村資本市場研究所 板津 直孝

要約

  1. 低炭素経済への移行を目的としたエネルギー政策の転換が、世界的に広がっている。グローバルサプライチェーンの構築が進む企業に対しては、関係各国の気候変動対策が、国外関連会社の事業に影響を及ぼし始めている。そのような中、世界の機関投資家288機関は、2018年6月、気候関連財務情報開示の強化等をG7政府首脳へ要求する共同声明を発表した。企業にとっては、自社事業に影響を及ぼす低炭素経済への移行政策に関して、経営課題として対策を講じ、企業の持続的成長の可能性を機関投資家へ積極開示することが、ますます重要になってきている。
  2. 企業の気候関連財務情報開示に関するグローバル・スタンダードは、FSBが設置した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)により公表されている。TCFDは、エネルギー政策の転換を、気候変動抑制の政策が企業にもたらす移行リスクに分類し、気候関連財務情報としての開示を提言している。具体的な移行リスクを想定するうえで、グローバル企業は、OECDが2017年5月に公表した「気候への投資、成長への投資」を活用することができる。日本国内の事業については、2018年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」に、最新の気候関連のシナリオ分析がある。いずれもパリ協定で合意した気候関連のシナリオに基づいていることから、包摂的で実現性が高いとされる。
  3. 世界的な化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトの影響は、化石燃料関連企業のみならず幅広い産業を巻き込んで加速しつつある。企業の持続的成長を損なうことなく低炭素経済への移行を実現するためにも、企業はその動向に同調した気候関連のシナリオ分析を進めることが重要である。その上で、企業は、経営戦略を気候関連財務情報として積極開示することにより、機関投資家の支持を集めることが期待できるといえよう。
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