米国の社会及び環境に対して説明責任ある資本主義法案

野村資本市場研究所 岡田 功太

要約

  1. 米連邦議会民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は 2018年8月、説明責任ある資本主義法案を上院に提出した。同法案は、ウォーレン議員のプログレッシブ(進歩主義)な政治的理念を実現するための政策であり、米国において長らく鬱積する所得格差の拡大に対する不満の解消を目指している。
  2. 同法案は、第一に、米国の大企業は、「アメリカ合衆国株式会社」という連邦免許を取得し、その取締役は、全てのステークホルダーに対して社会的責任を負うことを規定している。万が一、それらの規定に違反した場合、当該免許は取り消される。過度な株主至上主義の是正し、企業に対して株主だけではなく、従業員、顧客、地域社会等に対して説明責任を果たすことを求めている。
  3. 第二に、アメリカ合衆国株式会社の取締役及び役員は、自社株取得から5年間、または自社株買いから3年間にわたって、保持している持株の売却を行ってはならないと規定している。また、アメリカ合衆国株式会社は、取締役の少なくとも40%が当該企業の従業員によって選出されなければならないとしている。これは、取締役及び役員と従業員の間の格差拡大の抑止を目的とした規定である。
  4. 第三に、アメリカ合衆国株式会社が政治献金を行う場合、株主の75%及び取締役の75%以上の承認を得なければならないとしている。米国の大企業はロビー活動を活発に行っており、株主及び経営者の利益最大化を促す法令改正等も行われていることから、ウォーレン議員は富の偏在に対応するにはコーポレート・ガバナンス改革が必要であると考えている。
  5. 同法案が米国の大手企業から強い反発を受ける可能性があるにもかかわらず提出された背景として、ウォーレン議員が金融・資本市場の規制・制度改革に係る議論の土台形成を期待している可能性が考えられる。今後、同法案が、連邦議会における議論やトランプ政権が打ち出す政策にどのように影響を及ぼし、反映されうるのか注目に値する。
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