TCFDの提言に基づく法定開示の動き
-大手資源会社BHPビリトンの事例を中心に-

野村資本市場研究所 板津 直孝

要約

  1. 気候変動が経済全体に大きな影響を及ぼすことが世界的に認識されるようになり、金融資本市場においても、気候関連のリスクが企業に与える影響に注目が寄せられている。企業は、自社事業に影響を及ぼす低炭素経済への移行政策を経営課題として捉え、企業の持続的成長の可能性を積極開示することで、ESG投資を進める機関投資家の支持を得る必要がある。
  2. 化石燃料ベースのエネルギー・セクターは、低炭素経済への移行に伴う政策等の影響をより大きく受ける。機関投資家によるダイベストメント等の事例も、確認されている。そのようなセクターの先行事例として、世界最大手の資源会社であるBHPビリトンは、法定開示書類である年次報告書において、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿った情報開示を網羅的にしている。
  3. 石油、ガス、エネルギー用石炭の事業について大きな権益を有する同社であるが、持続的成長を実現できることを機関投資家に対し積極的に示すものとなっている。同社が開示した気候関連財務情報は、多くの企業にとって参考になるといえよう。
  4. 日本においても、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」の提言と内閣府令の改正により、有価証券報告書を念頭に、非財務情報の開示の充実に向けた取組みが進められている。TCFDの提言に基づく法定開示の環境が、整備されてきており、気候変動に対する日本企業のレジリエンスを、法定開示によって積極的に示すことが、今後、期待される。
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