議決権行使助言会社大手ISS日本向け議決権行使方針(2019年)

野村資本市場研究所 西山 賢吾

要約

  1. 議決権行使助言会社のISSの2019年日本向け議決権行使助言方針の改訂点は「社外役員の独立性判断基準への株式持ち合い関係の追加」である。具体的には、「政策保有銘柄企業出身の社外取締役および社外監査役は独立性がないと判断する」というもので、実際の改定は 1 年の猶予期間を置き、2020年2月開催の株主総会からを検討している。
  2. 6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは事実上さらなる持ち合い解消を要請していると見られるが、それは、株式持ち合いが安定株主の形成につながって、我が国企業の資本生産性や収益性に負の影響を与えるなど、我が国企業のコーポレートガバナンス向上における課題と見られているためと考えられる。ISSでも同様の問題意識から、株式持ち合いの相手企業出身の社外役員に独立性があると判断することは困難と判断し、今回の助言方針改定に至ったと考えられる。
  3. ISSは現在、自社の社外役員に対する独立性基準を、一部を除いて日本企業には適用していないことから、この改定が取締役選任の賛成比率に与える影響は低いと推察される。しかし、今回のISSの方針改定は、企業に対し、株式持ち合い、政策株式の保有に対する合理性の再検討や、より独立性の高い取締役会の構成の再考を促すことになるであろう。
  4. 2019年2月開催の株主総会以降に適用される助言方針の改定は、指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社の取締役会構成要件の厳格化である。これら企業に対しては取締役の3分の1を社外取締役とすることを求め、基準に満たない場合には経営トップ(社長、会長等)の取締役選任議案への反対を推奨することになる。
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