オランダの中央銀行による気候関連のストレステスト

野村資本市場研究所 板津 直孝

要約

  1. オランダ銀行(DNB)は、2018年10月8日、オランダ国内にある銀行、保険会社、年金基金を対象とした、気候関連のリスクに対するストレステストの結果を公表した。気候関連のストレステストとしては、中央銀行では、初めての実施である。金融セクターへの財務的影響は大きいが、個々の金融機関がポートフォリオのリスクを軽減することなどにより、管理可能であると、DNBは結論付けている。
  2. 同ストレステストの特徴は、低炭素経済への移行に伴う、化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギーシフトが及ぼす気候関連の移行リスクに焦点を当てていることである。「深刻だが十分起こり得る」4つの気候関連のシナリオ分析により、テールリスクを評価している。気候関連のシナリオ分析によりストレステストを実施するアプローチは、「気候関連財務情報開示に関するタスクフォース(TCFD)」が推奨している。
  3. 4つの気候関連のシナリオ分析に基づく、今後5年間の保有資産への影響は、最大で、銀行が3%、保険会社が11%、年金基金が10%に及ぶ。監督上の比率への影響としては、最大でオランダの銀行の自己資本(CET1:普通株式等 Tier1)比率が4.3%、保険会社のソルベンシー比率が16.2%、年金基金のカバレッジ比率が5.5%低下する可能性がある。
  4. 英国でも、2018年12月には、イングランド銀行が英銀のストレステストに気候変動の影響を含める方向で検討していることが報じられた。国際的には、気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(NGFS)が設立されており、2019年2月11日現在、加盟する中央銀行及び監督当局は30に上る。金融規制における気候変動リスク対応に関して、各国の中央銀行・金融監督当局の動向が、引き続き注目される。
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