企業等のサステナビリティ・パフォーマンスに着目したサステナビリティ・ リンク・ローンの発展と注目点

野村資本市場研究所 江夏 あかね

要約

  1. サステナビリティ・リンク・ローンとは、一般的に、事前に設定・合意された形で、借り手の「サステナビテリィ・パフォーマンス」の向上を促すためのインセンティブが組み込まれた金融商品である。具体的には、サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)達成を通じた金利負担軽減といったメリットが設定されるものの、借り手・貸し手ともに、管理に当たって通常のローンと異なる手間・コストが発生し得るといったデメリットもある。サステナビリティ・リンク・ローンは、諸外国で組成額が2017年頃から急速に拡大しており、2019年3月にはサステナビリティ・リンク・ローン原則(SLLP)も公表された。
  2. 世界各国でサステナブルファイナンスに注目が集まる現状に鑑みると、サステナビリティ・リンク・ローンの組成額がさらに増加する可能性もある。ただし、同ローンの多くがタームローンではなく、リボルビング・クレジット・ファシリティ形式であるため、どの程度実際の資金調達が実現するかは現時点では未知数とも考えられる。その意味で、サステナビリティ・リンク・ローンを通じて、どの程度の「追加性」が発現するかは注目されるところである。
  3. 今後について、情報開示やデータ蓄積等を通じて、金融商品としての透明性を向上させることが、サステナビリティ・リンク・ローンの更なる広がりのカギになると考えられる。サステナブルファイナンスにおける新たな金融商品という観点から、サステナビリティ・リンク・ローンの展開が注目される。
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